今や飛ぶ鳥を落とす勢いのA24製作。
「ライフ・アフター・ベス」は、ゾンビというジャンル映画に「コメディ要素」や「他のテーマ」などを盛り込んだアレンジ系といってもいい映画。ゾンビ映画は低予算監督たちにとっては効果的で取り入れたい要素なのか、星の数ほどの「クソツマラナイ」作品があるが、このアレンジ系の出現によって映画のクオリティが底上げされてきている感じがする。絶対神ロメロからすれば「そんなんやるなら作んなくてもいいーよ」と一蹴されそうではあるが、とにかくアレンジ系はそこそこ熱い。それも本作は「ミッドサマー」「ムーンライト」「へレディタリー」とイケイケドンドンの若手制作会社A24である。※調べてから気づいた・・・。
あのー。死んだ彼女が生き返ったんだけど・・・
[あらすじ]恋人ベスの死に落ち込むザックは、葬式の後も未練が残りついつい彼女の実家を見に行く。すると家の中には死んだはずのベスの姿が。なぜかザックを拒絶するベスの両親たち。ベスに会いたいザックは無理やりベスの家に入り込み、両親を問い正すのだが・・・。
ゾンビパニックの序盤展開を広げずに、ティーン2人の恋愛にフォーカス
死んだはずのベスが家に帰ってきている。でもベスの両親はザックをベスに会わせてくれようとしない。なにかがおかしい。映画はここから町中で起こっている不思議な出来事が徐々に明かされていく。つまりはゾンビ映画における真っ当なオープニング。安心して見られる展開。しかし本作は「広がっていくパニック」は断片的に説明はされるものの、主題としては追いかけず、あくまでも「ベスとザック」の2人を追いかけ続ける。
ベスは葬式後に家に戻ってきている事からも「死から蘇った」ことがわかっている。両親も困惑しながらも戻ってきたベスを受け入れる。なんとか強引に会うことができたザックの事をベスは彼氏と認識し、また二人でやり直したいと願う。今までと変わらないベスだ。ただし彼女は感情が不安定になっていて、常に何かを食べたがっている事に気づく。彼女の様子がだんだんおかしくなっていく・・・。
主人公はアメイジンググリーンゴブリン、デイン・デハーン
主人公はオデコがだいぶ怪しくなっきてた「性格悪そうなジェームス・ディーン」ことデイン・デハーン。なんともいえないこじらせ男子を見事に演じている。ベス役にはオーブリー・プラザ。あんまり知らない女優さんだなと思ってたらちゃっかり監督と結婚してた。そういう事か。彼女の「ザックを愛していながらも食べたい衝動が抑えられない」ゾンビ演技はなかなか秀逸だった。コミカルなんだけどちょっと泣けた。
ゾンビコメディとして笑わせながらも考えさせられる「最愛の人との別れ方」
もし愛おしい存在(たとえばラブラブの彼女だったり、最愛の子供だったり)が死から蘇って目の前に現れたら。言えなかった一言や、後悔する事が二人の間にあったら。そして相手が少しづつ凶暴になり手の追えない存在になってしまったら、自分だったらどうするのか?どんな決断ができるのか?そんな事をじわりと考えさせるテーマを持ちながら、軽妙なコメディ仕立てにしている点はセンスの光る演出だった。自分の相方には言いたいことはしっかりと伝えておこう。
恐怖新聞の読み過ぎで寿命が縮んだ後に冥界から蘇ったグラフィックデザイナー。
禁断の魔法でパンフレットのデザインやプロジェクションマッピングのディレクション等を行う。実は「死霊のはらわた」がオールタイムベストなのはここだけの秘密。