カルト的人気のある70年代ホラー。
この映画冒頭で流れる見覚えのあるクレジット「グラインドハウス」。このクレジットどこかで見たことがあるなと思ったら、クエンティン・タランティーノがあえてB級映画スタイルで制作した「デス・プルーフ」冒頭でオマージュ的に使用していたあれ。「グラインドハウス」とはキワモノやB級の映画を2本立てで流す映画館の事らしく、つまり本作はそういう趣旨の映画という事になる。
タランティーノも大好きなグラインドハウスのイントロ
「処刑軍団ザップ」トレイラー。音楽が最高。
アメリカの田舎町を襲う真熊崇拝のヒッピー集団 vs 狂犬病
[あらすじ]アメリカの田舎町にヒッピー風の出で立ちの悪魔崇拝者の若者(すごい設定)がやってくる。町で暴れる彼らに報復するために、1人の少年が売り物のミートパイに狂犬秒になった犬の血を注入。それを食べた若者たちは次第に狂っていき、殺し合いをはじめる。彼らに接触したり傷つけられた人はどんどん感染し、街中の人が狂人となって襲いかかる。
グラインドハウスものと言われる2本立てB級映画
まず最初に言うとこの映画は「狂犬病に感染した人間が人を殺しまくる」ので、「ゾンビ映画」ではない(!)B級のホラーの中でもジャンル分けが難しいものはなんとなく雰囲気でカテゴライズされる事がよくあって、「感染が広がって人を襲う」という部分だけで「あーこれゾンビ映画ね」って感じになったのかも知れない。映画の内容と同じく宣伝の適当な感じもまたB級映画にふさわしい。タイトルの「処刑軍団ザップ」は本題は「I DRINK YOUR BLOOD」で日本人としては頭悪そうなタイトルセンスに関心するものの、どこからそのタイトルになったのかは不明。本題の方はグラインドハウスものとして、『I Eat Your Skin』という映画と2本立てにするためにこのタイトルになったらしい。
70年代ファッションで決めたキレキレの無名俳優たち
登場人物は、メインキャラとなる上半身常に裸でロン毛にランボーみたいなバンダナを巻いている男や、いきなり焼身自殺を遂げる謎の東洋人女、狂犬病になって口から白い泡を吹きまくって人を襲う黒人等、エロ担当の女性陣たちもなかなかキャラ立ちしていて楽しい。ヒッピー集団がボロ家のネズミをめっちゃ殺して「バーベキューだ!」は名言(吐きそう)。
ホラーファンが気になるゴア描写は70年代にしてはがんばっている
ホラー映画の肝「ゴア描写」についても、ロメロの「ゾンビ」公開の9年前(1970年公開)という事を考えても頑張っている方だと思う。安っぽさはあるものの、「串刺し、めった刺し、ざく切り」はきちんと抑えてある。お約束のエロシーンも忘れていない。ゴブリンみたいな「聞いているとだんだんイライラしてくる」シンセサイザーの音楽も絶妙で、すべての要素が詰まっている。
ゾンビオタクでも抑えておけばちょっと自慢できるかも知れない
映画の内容としては「ヒッピー集団が好き勝手やった恨みを買って、子供に狂犬の血が入ったパイを食べさせられて口から白い泡ふきながら周りの人間を殺しまくる」だけで、70年代のB級映画という事もあり、楽しめるか?といえば「うーん」となるかも知れないが、なるほどタランティーノはこういうのを見まくって映画を楽しんでたんだなと思えば結構いける。みんなそう思ってるのかこの映画は配信でも見られるし、ブルーレイでHDニューマスターなんてものまで出ているので、未だにカルト的な人気のある作品として、教養程度に見ておくと自慢できるかも知れない。
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